小平 篤乃生 Atsunobu Kohira
Carbon Variation N°1

2017年9月1日(金)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjukuにて、小平篤乃生個展「Carbon Variation N°1」を開催いたします。


©Atsunobu Kohira, Courtesy of Yumiko Chiba Associates


石炭という素材をめぐって小平は数年来の逍遥を続けている。出会いは走査顕微鏡で見た景色だった。レンズの向こう、超クローズアップの石炭の地肌は美しきグレースケールの世界で、まるで未知の惑星のごとき壮大な眺めだったという。そこから始まった旅を「石炭の巡礼」と小平は名付けたが、あらかじめ定められた目的地はなく、決まった道筋もない。
数億年前を生きた巨大なシダ植物たちが地中深く埋もれ、地熱でじりじりと熱せられ、計り知れない圧力をかけられて錬成される過程を想えば、石炭という物質は彫刻的に生み出されると言えるかもしれない。温度を加え、ゆっくりとこねられ、冷えてできた彫刻。それは、人類が現れるより遥か昔、地球上に繁茂した生き物の証左であり、生成されるまでの永い永い年月を無言のうちに内包する塊/ヴォリュームである。
地域的な偏りが比較的少なく、埋蔵量の多い化石燃料である石炭は、人類にとって身近なエネルギー資源だ。それは燃やされて電気エネルギーとなり、暮らしの中に偏在している。今回、小平が展示室で想起させるのはそうしたエネルギーへと変換された石炭だが、エネルギーというよりもむしろ生命の源泉であるところの「精気」というべきかもしれない。地球が生み出した漆黒の彫刻、石炭に宿る精気。エネルギーはその精気の発現である。石炭を用いて特別に創られたインクが、ウォール・ドローイングのメディウムとなり空間を満たす。ドローイングの基点となる壁面の電源から採られたエネルギーは、部屋を薄暗く照らす明かり(その暗さは洞窟を思わせるという)となり、スピーカーを通って間欠的なノイズを響かせる。こうした小平の手つきには、石炭の精気の「可視化」ではなく、「空間化」または「ヴォリューム化」という言葉がふさわしい。かねてより音は小平にとって重要なモチーフのひとつであるが、この非物質的な存在に対しても、彼はそれが空間を満たすという点において量塊/ヴォリュームをもつと考える。音量を大きくすることをヴォリュームを上げると言うが、小平の実際に空間を占める音の体積が増えるような、あたかも彫刻的イメージを持っている(もちろん実際にはそれが振動現象であることは了解の上で)。空間全体を満たすドローイングが音を伴って光のなかに立体的に立ち現れるとき、黒いダイヤとも言われる石炭の精気が、それが生み出された長い年月を超えてヴォリューム化される。
興味の赴くまま、偶然の出会いに導かれて「石炭の巡礼」は続く。本展はその旅の一章であり、ボキャブラリーにこだわるなら「一巻(a volume)」であるとも言えるのだろう。

橋本 梓(国立国際美術館 主任研究員)


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■小平 篤乃生 個展「Carbon Variation N°1」
会期:2017年9月1日(金)- 9月26日(火)12:00 – 19:00(休:日、月、祝日)
会場:Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku

■オープニングレセプション
日時:2017年9月2日(土)18:30-20:00
会場:Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku

■トークイベント
小平 篤乃生 × 橋本 梓(国立国際美術館 主任研究員)
日時:2017年9月2日(土)17:00-18:30
会場:Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
*事前申込制、参加費:無料

【お申し込み方法】
件名「トークイベント参加」、本文に、参加人数、お名前、電話番号をご明記のうえ、event@ycassociates.co.jpまでメールでお申し込みください。
*定員(20名)になり次第、受付を終了いたします。
*ギャラリーからの返信メールが届かない場合は、営業時間内にお問合せください。

■関連情報
ベテューヌ(フランス)で開催されるグループ展に参加致します。
“Intériorités”
会期:2017年9月9日(土)- 2018年2月18日(日)
会場:LABANQUE BÉTHUNE(44 Place Georges Clèmenceau, 62400 Béthune)
キュレーション:Léa Bismuth
https://www.facebook.com/labanquebethune/

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■Atsunobu Kohira solo exhibition
“Carbon Variation N°1”
September 1 (Fri) – 26 (Tues), 2017
Venue: Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
Opening Hours: 12:00-19:00
*Closed on Sundays, Mondays, National Holidays

■Opening Reception
September 2 (Sat) 18:30 – 20:00
Venue: Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku

■ Talk Event
September 2 (Sat), 2017, 17:00 -18:30
Venue: Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
Atsunobu Kohira & Azusa Hashimoto, Senior Researcher, the National Museum of Art, Osaka
*Admission free, Booking required,
*For booking, send an email with your name, address, and telephone number to event@ycassociates.co.jp
*If you do not receive a reply from the gallery, please contact us during gallery hours.

■Related Exhibition
Atsunobu Kohira will participate in the following group exhibition held in Béthun, France:
“Intériorités”
September 9 (Sat), 2017 – February 18 (Sun), 2018
Venue: LABANQUE BÉTHUNE(44 Place Georges Clèmenceau, 62400 Béthune)
Curated by Léa Bismuth
https://www.facebook.com/labanquebethune/